YouNet A letter from Singapore (280916掲載)

〜公用語は4言語だけど……〜
 齊慶 辰也さん
海外からのシンガポールの入り口はチャンギ空港。日本人はチャンギ空港に到着するとちょっと安心感を持つ人が多いようです。海外ですから案内表示は全て英語か現地語。それは、タイに行ってもベトナムに行っても中国に行ってもそうです。それが一般的なのにチャンギ空港では、英語、中国語、マレー語の表記に並んで日本語での表記があるのです。シンガポールの公用語は、英語、中国語、マレー語、タミル語の4言語です。特に英語は共通語として、いつでもどこでも誰とでも通じる言葉です。小さな売店やホーカーの屋台でもほぼ100%英語が通じます。

博物館の案内看板
逆に、シンガポールの国語と定められているマレー語は、国歌や軍隊の命令以外は一般に使うことが少なく、マレー人以外ではあまり流暢に扱える人がいないようです。全ての国民は、英語と母語(中国語やマレー語やタミル語)を身に付ける2言語政策の下で学びます。全ての国民がバイリンガルに近いのです。そんな特別な言語環境ですが、街中にある公的な標識や看板は、4言語での表記が一般的です。公共交通機関のバスや電車は、ほとんど4言語で注意点が記されています。しかし、公的な標識の中には4言語に加えて第5言語として日本語での標識なども見かけます。ドイツ語、フランス語、韓国語など様々ある言語から日本語が使われている所に、シンガポールが日本に対して特別な感覚や配慮をしていることを感じます。もう一つ日本語表記が多く見られる所があります。それは第2次世界大戦時、日本軍が関係した戦争史跡です。街中の史跡にも日本語での説明が有りますし、博物館などの戦争記述にも日本語が併記されていることが多くみられます。交流の重要な相手としての日本への思いと日本人に暗い歴史を理解していて欲しいという交錯した思いを感じます。なぜシンガポールで日本語を目にするのか?その理由を想像することも大切だと思います。


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