YouNet A letter from Singapore (271120掲載)

〜シンガポールで能鑑賞〜
 齊慶 辰也さん

 体育館での能の鑑賞
シンガポール日本人学校の体育館が瞬時に、室町時代へタイムスリップしたような感覚になりました。能楽観世流シテ方の寺井栄さんと娘の千景さん・美紀さん、そして能楽囃子の楽器、笛や小鼓(こつづみ)や大鼓(おおつづみ)の奏者など総勢10名による「能」が披露されました。女性の演者でしたが、場面の役によって全く違う声の高さや強さ、そしてそれに伴う動きです。時には優雅に時には激しく、動作と声とお面と衣装によって状況や感情が表現されました。それに加え能楽囃子が日本的な雰囲気を高めます。見かけ以上に鋭い音や乾いた音が響き、生徒達は日本の中世「能の世界」に引き込まれました。寺井さんによる能の説明もあったので、分かりやすく親しむことができました。学校の体育館での上演ですが、少しでも能舞台を再現しようと、後方スクリーンには生徒が描いた松などを映し出し、雰囲気を盛り上げました。
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能楽師の寺井さんは毎年シンガポールのラサール芸術大学で能の講義を受け持ち、シンガポール日本人学校でも能講座を実施しています。
生徒が引き込まれた能の世界
今年は日本人会創立100周年式典の記念イベントとして来星されました。記念イベントでは、日本人会館で「能公演〜寺井父娘会〜」として仕舞「岩船」、舞囃子「紅葉狩」、能「猩々乱(しょうじょうみだれ)」が演じられました。この記念式典に先立ち、中学生のために本校で「船弁慶」を披露されたのです。日本から遠く離れたシンガポールですが、逆に本物の日本文化に直に触れる機会もあります。間近で見られた能鑑賞をはじめ、落語家や歌舞伎役者さんが、寄席や講演を学校で実施していただけます。日本の学校では直に見ることができないものも多くあります。それらは、今回のようにシンガポールで日本人を支える日本人会の支援によるものがほとんどです。日本人コミュニティの有り難さとともに、教育への期待の大きさを常に感じています。


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