YouNet A letter from Singapore (270116掲載)

〜熱帯雨林の国シンガポール〜
 齊慶 辰也さん
街路樹のバナナの木 
皆さんのシンガポールのイメージは、天空に巨大なプールが横たわり、高層ビルが立ち並ぶ近代的都市国家だと思います。巨額な資本と活発な経済活動、強力な政治主導によって、実はジャングルである熱帯雨林を切り開いて創りあげられた都市国家ということを、私たちもしばし忘れて生活をしています。しかし、ここは間違いなく熱帯雨林の島国であることを実感することがあります。例えば、チャンギ空港からシティ中心部に向かう高速道路は、レインツリーと呼ばれる巨木の並木道の下を走ります。数十年で空を覆うような巨木となるのです。
猿が走り回った木々
道路を横切る歩道橋は、色鮮やかなブーゲンビリアの花が彩っています。街路樹として、様々な常緑樹が植えられていますが、中には、マンゴーの木であったりパパイアの木であったりします。時には、立派なバナナの房が垂れ下がっていたりもします。
注意を呼び掛けるチラシ 
そして、所々に残る空き地は、原生林のように木々が生い茂っています。コンドミニアムと呼ばれる巨大なアパートに多くの市民が住んでいます。そんな所にも、熱帯雨林を感じる出来事があります。先日も、コンドミニアム内の木々の間を猿が走り回り、プールにも入っていたという事件がありました。野生のサルが、果物を取って食べたり人間のゴミ箱をあさったりします。ついには、コンドミニアムの掲示板に、注意を促すチラシが張り出されていました。以前には、コンドミニアム内の複数の草むらで、コブラが出たということも起きました。日本では図鑑の中の危険な生き物が、普通に子供たちが遊ぶプレーグラウンド脇の草むらにいるのです。巨大なカタツムリやトカゲ、そして大きなヤモリなどは、どこでも見ることができます。グリーンシティーと呼ばれるシンガポールは、植物と動物の楽園。間違いなく熱帯雨林を開発して出来上がった所だと感じます。

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