YouNet A letter from Singapore (260822掲載)

〜シンガポールと日本の歴史〜
 齊慶 辰也さん

ナショナルデーに向けて、各地、各団地等で翻るシンガポール国旗
8月9日はシンガポールのナショナルデーです。1965年のこの日、シンガポールはマレーシアから独立して共和国になりました。今から49年前の出来事です。最初は今のような発展が約束された状況ではなく、マレーシア連邦から半ば追放される形で独立。時の初代首相リー・クアンユーは、融合と統一がかなわなかった苦悩と前途の苦難を思い、涙の記者会見を行ったそうです。しかし、優秀なその指導者は、悔し涙を同国の経済的成功に昇華させ、今ではシンガポールの「建国の父」と呼ばれています。シンガポールは、第二次世界大戦中、日本軍による占領も経験しました。

資料館内にある降伏時の様子を再現した蝋人形
今、ユニバーサルスタジオ・シンガポールなどレジャー施設がひしめくセントーサ島西端に、ひっそりとシロソ砦があります。そこには戦争時の遺構とともに、英語と日本語とで表記した旧日本軍や日本統治時代の展示があります。また、シンガポール本島中央のブキティマにあるオールドフォードファクトリーには、日本とシンガポールとの不幸な歴史を伝える資料館があります。過去を越え、今シンガポールと日本とが真の友好関係にあるのは、シンガポールの対応の素晴らしさが大きいと思います。初代首相リー・クアンユーは、こう言っています。「許そう、しかし忘れまい」。シンガポールの国として、日本軍による虐殺および占領に対する答えが、このスローガンです。シンガポール日本人学校は、現地理解を深めるために、シンガポールの各所で調べ学習を行います。歴史、文化、民族など様々な分野を選択します。7月にシロソ砦やオールドフォードファクトリーを訪ねた生徒たちは、一様に衝撃を受けた様子でした。歴史を直視することで、今ある関係の大切さを痛感するとともに、シンガポールの人たちの寛容さと未来志向を感じます。




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