YouNet 尾北医師会シリーズ(12)・・・(200423載)

〜頭痛をよく理解するために〜
尾北医師会 池田  隆 
 
頭痛とは、当たり前のことですが、頭という部位に生ずる「痛み」のことです。そして、「痛み」を感ずることのできるのは、当事者(本人)のみです。しかも、医学の発達した現在でも、感知・解析する検査装置がなく、科学的な方法で分析ができないのです。ですから、自分の頭痛を要領よく分類・整理し、その内容を上手にお医者さんへ伝えることがとても大切なこととなります。

頭痛をどのように解析するか(お医者さんが欲しがっている情報)
原因となるメカニズムや疾患により、また、病気や痛みを発生する組織によって、起こり方・痛みの症状や持続時間・経過などに、それぞれの頭痛の特徴があらわれてきます。この特徴をきちんと整理・分析するための具体的な事項は(1)いつどのように始まったのか(突然、ゆっくり、前ぶれがあってからなど)、その後どうなったか(悪くなる一方、繰り返すなど) (2)その痛みはいつまで続いたか、続いているか (3)どんなとき・どんな状態でひどくなるのか、軽くなるのか(起床時、夕方にかけて、夜間のみ、立ち上がったときなど) (4)どんな痛みか(ドクンドクン、しめつけられる、チクチクなど) (5)どこが痛いのか(こめかみ、目の奥、首すじ、前後左右など) (6)頭痛のほかにどんな症状があるのか(発熱、吐き気・嘔吐、麻痺、意識障害など)です。以上の事柄が、正確な頭痛診断にとてもよく役に立つ情報となります。

どのような考え方で頭痛を知っておくとよいのか
頭痛の分類には国際分類があり、その中で大まかに2つの考え方による分け方が使われています。
(1)1次性頭痛:慢性、発作性、機能性などとも言われ、日常生活に支障をきたす痛みを繰り返すものが多く、代表的なものに、片頭痛(偏ではなく片が正式)、群発頭痛、緊張型頭痛などがあります。痛みの原因が機能性で、何らかの病変がないので、CTやMRI検査で異常をとらえることができません。現在でもそのメカニズムが完全には分かっていないものが多く、このタイプの頭痛の完璧な治療は未完成と言わざるを得ない状況です。
(2)2次性頭痛:急性、持続性、器質性などとも言われ、病気が原因で頭痛を生じてきます。中には、脳・神経を傷害して後遺症を残す、失明に至る、生命にかかわるなど、危険な病気が含まれています。(1)くも膜下出血 (2)髄膜炎 (3)慢性硬膜下血腫 (4)脳瘍 (5)脳出血(6)側頭動脈炎などです。危険な信号(症状)は、今まで経験したことのない痛み・起こり方が急・痛みが持続する・意識障害や麻痺を伴う・吐き気や嘔吐・高熱が続くなどで、これらの症状がある場合は、CTやMRI検査ができる脳外科や神神経内科のある病院を急いで受診してください。早期診断・早期治療が最も重要です。頭痛で訪れる「科」は神経内科または脳神経外科です。「頭痛持ち」で悩んでいる方は新薬も発売されていますので、専門である頭痛外来の受診をおすすめします。さらに詳しいことは、日本神経学会のホームページ、一般の方へ「頭の痛み」の中にあるガイドライン、または日本神経学会ガイドライン「慢性頭痛」(2002年版)を参考にしてください。

読者の皆さんから「毎号役に立つ」と好評の「尾北医師会シリーズ」は、今号で終了します。最終回は、「頭痛について知りたい」の読者の声に応えての掲載となりました。

社団法人「尾北医師会」(大口町下小口6丁目)
犬山、江南、大口、扶桑各市町の地域医療を担う医師会員(現在249人)で構成。尾北看護専門学校、尾張北部地域産業保健センター、地域ケア協力センターを設置、人材育成や保健・医療・福祉サービスの地域ケアシステム化を図る。http://www.bihoku.aichi.med.or.jp/

戻 る