YouNet 尾北医師会シリーズ(9)・・・(200123載)

メタボリック症候群
〜予防、増えている子どもの肥満〜
尾北医師会 西村直子 
 
近年、メタボリック症候群という言葉が広く一般に知られるようになりましたが、単にお腹が出ていて腹囲の大きいことをいうのではありません。メタボリック症候群とは、内臓脂肪の蓄積に伴い、中性脂肪、HDL-コレステロール、血圧、空腹時血糖などに異常を呈する症候群のことをいいます。
深くかかわる小児期の生活習慣
メタボリック症候群は、心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患の強い危険因子であると同時に、2型糖尿病の危険因子でもあるため、その予防と治療が重要視されています。これらの心血管疾患は主に成人期に発症しますが、動脈硬化性の血管病変はすでに小児期に始まっているとされています。また、小児期の肥満が成人の肥満に移行し、メタボリック症候群と深く関わっていることからも、小児期の対応がますます重要となります。生活習慣形成のスタートは小児期にあります。小児期に適切な生活習慣を身に付け、肥満の予防、メタボリック症候群の予防に努めることが心血管疾患予防の第一歩なのです。
小児肥満の判定には肥満度がよく使われ、(実測体重−標準体重)÷標準体重×100(%)で定義されます。幼児では肥満度15%以上、学童以降では20%以上を肥満と判定します。成人ではbody mass index(BMI:体重÷身長×身長(kg/u)がよく用いられ、 25以上を肥満と考えます。わが国における小児肥満の頻度は、昭和40年代は2〜3%でしたが、近年の統計では8〜10%とおよそ3〜4倍に増加しています。欧米化した食事、インスタント食品、スナック菓子、外食の一般化など食生活が大きく変化したこと、外遊びや運動の機会が減少したことなどが原因と考えられます。7歳の肥満の40%、思春期肥満の70〜80%が成人肥満に移行するとされています。
バランスの良い食事と適度な運動を
朝食を食べない、夜更かしをする、メディア漬けの子どもなどが問題となっていますが、これらはすべて食行動やエネルギー代謝に影響を与えます。肥満の予防には、幼児期からの適切な食習慣と運動習慣が必要です。バランスの良い食事を1日3回食べましょう。また、牛乳やジュース類の飲みすぎに気を付け、菓子類は量を決めて食べるようにしたいものです。成長期の小児では、肥満があっても過度な摂取エネルギー制限は不要です。正常な成長を妨げてしまう恐れがあるからです。小児期には身長が伸びるため、体重を維持あるいは緩やかに減量することにより相対的に減量が可能です。運動習慣を身に付けることは、筋肉・骨格系の発育を促し、心肺機能や運動能力を高める効果もあります。家族そろって食卓を囲み、休日には子どもと戸外で遊び、スポーツに親しむといった生活を心掛けることが、親子のコミュニケーションの場を生むと同時に、メタボリック症候群の予防につながります。今日からでも家族みんなで簡単に始めることができます。

社団法人「尾北医師会」(大口町下小口6丁目)
犬山、江南、大口、扶桑各市町の地域医療を担う医師会員(現在249人)で構成。尾北看護専門学校、尾張北部地域産業保健センター、地域ケア協力センターを設置、人材育成や保健・医療・福祉サービスの地域ケアシステム化を図る。http://www.bihoku.aichi.med.or.jp/

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