YouNet 尾北医師会シリーズ(8)・・・(191219掲載)

冬場に多い脳梗塞のサイン
尾北医師会 永松 香 
 
サッカー日本代表前監督オシム氏の脳梗塞報道が、各紙を騒がせています。心臓や高血圧の持病があるようですが、早い回復が望まれます。さて脳梗塞ですが、実は冬に特に多いのではありません。脳梗塞は、脳内の太い血管(主幹動脈)や頚動脈の動脈硬化が進行し、血管内に血栓ができて詰まることにより起こる「アテローム血栓性」、脳の深部の血管が詰まることによって起こる「ラクナ」、心臓に発生した血栓が脳に流出して脳動脈閉塞を起こす「心原性」、その他の4つの臨床病型に分けられます。アテローム血栓性では季節差がなく、ラクナは夏と冬に多く、心原性は冬に多い傾向があります。脳梗塞は70歳代にピークがあり加齢が関係します。午前7〜8時台と午後6時台に発症が多いとされています。
脳梗塞って?
脳梗塞を理解していただくため、イメージ化してみます。脳梗塞は、血流が途絶えるか減少するため支配領域の脳が損傷を受ける病態です。そこで、血管を川、血流を水の流れと思ってください。流れが途絶えれば下流の畑や作物はダメになります。その流れを障害する状況は?それは、台風や大雨で土砂やゴミ・流木が堆積する、逆に干ばつで川底が見える状態です。高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙・飲酒は脳梗塞の危険因子の代表ですが、まさにこの原因に相当する血管内の障害なのです。高血圧・糖尿病は血管を傷つけアテロームと呼ばれる土砂やゴミ・流木を堆積しますし、心臓では不整脈(特に心房細動)を生じ血の固まりをつくり、巨大なゴミ・流木となります。また糖尿病・多量の飲酒は脱水を助長し喫煙は血管を細小化します。中性脂肪やコレステロールがゴミや流木になりアテロームを形成します。またそれぞれの危険因子は相互に複雑に絡み合って悪影響を及ぼし合い、さらに危険な状態を作り出します。
脳梗塞のサインは?
一般に症状がサインと思われがちですが、脳では発生が突発的ですので症状が出れば発症したと考えるべきで、マヒや意識障害・構音障害・視野障害などは緊急サインです。脳機能の高度で複雑さゆえです。むしろ定期の血液や心電図・尿検査などで指摘を受ければ、それが発症前のサインと考えるべきです。汗をかいた、焼肉でビールを大分飲んだ、温泉に行き何度も入ったなどもサインです。冬場は室内の暖房と外気温の低下、過食、運動不足などが脱水や血圧変動を起こします。また高齢者は潜在的に脱水状態で動脈硬化もありますので意識しておくことは予防になります。指摘がないからといって安心はできません。常に川の流れをイメージしてください。
適正なコントロールを
脳梗塞は年齢とともに危険性が増大します。諸検査で異常の指摘を受けたらサインが出ていると考え生活習慣を正し、また主治医の指導に従って努力してください。必ず適正なコントロール領域がありますので、まずは医師にご相談ください。

社団法人「尾北医師会」(大口町下小口6丁目)
犬山、江南、大口、扶桑各市町の地域医療を担う医師会員(現在249人)で構成。尾北看護専門学校、尾張北部地域産業保健センター、地域ケア協力センターを設置、人材育成や保健・医療・福祉サービスの地域ケアシステム化を図る。http://www.bihoku.aichi.med.or.jp/

戻 る