YouNet ペットとの共生を目指して(10)・・・(210128掲載)

〜エキゾチックアニマルに多い病気〜
犬山動物病院長 太田亟慈

皆さんは「エキゾチックアニマル」という言葉をご存知ですか。少々聞きなれない言葉ですね。辞書的には外来動物、身近でない動物、変わった動物…という広範囲な意味。動物病院では、イヌやネコ以外の伴侶動物(コンパニオンアニマル)を表す言葉として使い、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類や昆虫をも含んでいます。最近はペットショップに行くと驚くほどたくさんの種類のエキゾチックアニマルがいて、このような動物を伴侶動物として飼う人が増えています。当院でもハムスター、ウサギ、プレーリードック、フェレット、サルなどの哺乳類にとどまらず、インコなどの鳥類、カメ、ヘビ、トカゲなどの爬虫類まで多岐にわたり、最近ではミニブタの来院も増えています。読者の中には「あら、うちの子ってエキゾチックアニマルって言うのね」と思われた方もいらっしゃるのかもしれないですね。中でもハムスター、ウサギ、フェレットのオーナーは群を抜いて多いため、この動物に多い病気について紹介します。
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ハムスターは、体の小さなジャンガリアンハムスターや大きなゴールデンハムスターが代表選手。種や専門フードを両手で持って食べる愛らしさが人気で、愛らしさゆえ餌の与えられすぎによる肥満が多いように思います。特にヒマワリの種の与えすぎには注意が必要です。また、ケージや回し車のサイズが体に合わないと、脱走や骨折してしまうことがあるので注意してください。
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ピーターラッビットのモデルとなったウサギのネサーランド、耳の垂れたロップイヤー、品種不明のいわゆる交雑種も多く来院。来院理由の多くは「突然餌を食べなくなった」です。原因は奥歯の伸びすぎによる摂食困難。ウサギの歯は、すべての歯が一生涯伸び続けます。あまり咀嚼を必要としない柔らかい餌を与え続けると歯の摩耗がされず伸びすぎてしまい、ひどいものは麻酔をかけて奥歯を削らなければいけません。一般の固形フードに干し草やワラを入れることで十分に予防できます。また、骨の強度の割に脚力が非常に強いため、興奮して暴れたり無理に抑えたりすると骨折することがあります。繊細な骨のため、折れるとなかなか治りにくく完治が難しいもの。普段から人の声や手に慣れさせて警戒心を取り除くことで、突発性の事故的な骨折を予防しましょう。フェレットは、家でペットとして飼えるように改良されたイタチ科の小動物で、人なつっこくて好奇心がとても旺盛。犬のジステンバーウイルスに感受性があるため、年に1度のワクチン接種が重要で、犬の病気のフィラリアが寄生する可能性があるため、フィラリア予防も必要になります。中高齢になってから見られる、ホルモン異常による体調不良も来院に多く、、副腎といわれる臓器から多量のホルモンが放出されることで、脱毛や痒み、生殖器の異常、性格の凶暴化が症状として見られます。手術で異常な副腎を取り除くか、一生涯ホルモン抑制剤を使用するしかなく、すべてのフェレットがかかるわけではありませんが治療が大変な病気です。
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好奇心からくる、異物の誤食による体調不良も多い病気。異物の状態によっては外科手術をしなければならないこともあるため、室内で遊ばせる時はコンセント、ぬいぐるみ、ラバー製品などを周辺に置かないようにしましょう。エキゾチックアニマルの多くは小型のものが多く、飼育環境が健康状態に大きく影響します。鳥類、爬虫類は、体温調節があまり上手ではないため温度変化が原因で病気になってしまうケースも。飼育温度(適正室温は25度くらい)の安定に注意してください。エキゾチックアニマルは病気になると治りにく、費用がかかるケースが多いようです。健康診断や検便などをまめに行い、健康を維持することが重要です。
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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