YouNet ペットとの共生を目指して(8)・・・(201126掲載)

〜犬の問題行動〜
犬山動物病院長 太田亟慈

今回は、子犬に多い問題行動についてのお話。子犬にはたくさんの問題行動があります。例えばトイレの失敗、甘がみ、破壊行動など、大きくなると自然に治まる場合もありますが、全てがそうではありません。とっても可愛くて、飼い主のやる気も充実している時期にしっかりトレーニングすることが重要です。大切なのは、この時期の子犬の特徴を知ることです。その1つは好奇心が旺盛な時期だということ。何事にもよく慣れる時期のため、少しずつ様々なことを体験させてあげましょう。もう1つは恐怖に対する感受性が強いこと。体罰を与えたりせず、できるだけ褒めて育てることを心掛けましょう。
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まずはトイレトレーニング。トイレを簡単に覚えさせる魔法の方法はありません。子犬をよく観察し、排泄のリズムをつかむことがポイント。そろそろトイレの時間かなと思ったらトイレに連れて行きましょう。次にトイレの作り方。トイレシーツは常に乾いたもので、匂いが残るようにと前の排泄物を残しておくのはよくありません。周囲にバスマットやキッチンマットなど紛らわしいものは置かず、子犬に分かりやすいトイレにしましょう。上手にトイレが出来たら思いっ切り褒めてあげ、失敗したときは叱らず、匂いが残らないようにきれいにしましょう。失敗を叱ると排泄行為そのものが叱られていると思い、隠れてするようになります。今度は早めにトイレに連れて行こうという、大きな気持ちで取り組みましょう。食後10〜30分ぐらいで便意が出てくると言われています。ご飯を食べてしばらくしたらトイレへ・・・。食糞癖になることもあるので、ウンチはできるだけすぐにかたづけましょう。
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次に甘がみのトレーニング。子犬は非常に好奇心旺盛で、いろいろなものを口に入れて確かめます。初めはかわいく思えても次第にエスカレートし、血が出るほどかまれてしまうこともあります。甘がみを完全にやめさせることはとても難しいのですが、かむ力加減を教えてあげることでずいぶん改善されます。普段から人の手足を使って遊ばないようにし、かんでもいいおもちゃを与えることが大切。食べ物を入れて遊ぶ知育玩具などがお薦めです。トレーニングは痛いと感じるくらいかみついたら、大きな低い声で「痛い」と言います。高い声で叱るとますます子犬は興奮してしまいます。短時間に3回注意しても止めない時は、子犬と人の間に物理的に距離を空けましょう。つまり子犬を部屋から出すか、飼い主さんが部屋から出て精神的な罰を与え、強くかむと遊んでもらえないことを教えます。これは根気よく続けるしかありません。甘がみは放っておいても直ることはありません。特に、小さいお子さんがいるお家はしっかりトレーニングしましょう。
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最後に破壊行動です。大事なことは子犬を放しっぱなしにしないこと。目が届かないときは必ずサークルやケージに入れ、かまれて困るものは手の届かないところに置き、かんでもいいおもちゃを与えましょう。おもちゃを選ぶときは、飲み込めない大きさ、壊れない硬さ(硬すぎると歯が折れることも)、日常生活ではあまり使わない素材。子犬用としてはゴムやロープ、硬いプラスチックなどです。また、移動できないもの(家具など)には苦味のスプレーなどを利用するのもお薦めです。どの問題行動も放っておいて良くなることはありません。習慣づかないよう、上手にできたときは褒め、悪いことをしない環境をつくっていきましょう。子犬のころにしっかり頑張るかどうかで、後の十数年の暮らしが大きく変わります。根気よくトレーニングして、子犬との暮らしを有意義なものにしましょう
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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