YouNet ペットとの共生を目指して(4)・・・(200723掲載)

〜夏に多い病気とは〜
犬山動物病院長 太田亟慈

夏は、動物にとっても過ごしにくい季節です。人と同じで、動物も食欲が減退して、多少の体重減少がみられます。これは、生理的なもので心配ありませんが、好きなものだけ与えて栄養が偏らないように、少量でもバランスがとれた食餌を与えるように心掛けてください。体温調節がうまく行えない動物にとって、一番恐ろしい病気は熱中症です。熱中症とは、暑い環境下に長時間いると起こる体温の異常のこと。気温と湿度が高いところに長時間いると、体温の調節機構がうまく働かなくなり、体温が急激に上昇、熱中症になります。特に、犬や猫は人と違って、汗腺が発達しておらず、汗をかくことによって体温を低下させることができません。発汗作用の代わりとして体温を下げる方法は、唯一パンティング(口を開けながら、「ハア、ハア」とするような単一、または連続的な呼吸様式)のみ。犬や猫の肉球にも汗腺は存在しますが、ここで行われる発汗作用は微々たるものです。そのため、犬や猫は梅雨時期から夏場にかけて熱中症を発症する確率が高いのです。原因として多いものは、高温多湿の閉め切った部屋に放置したり、長時間直射日光にあたったりすることです。特に閉め切った車内では、わずか数分で発症することもあります。扇風機による送風での体温の低下は、汗腺が発達していないためあまり効果はありません。また、犬では熱中症になりやすい品種もいます。鼻の短いパグやフレンチブルドックなどの短頭種とよばれる種類です。ですから、私たち人間にはそれほど暑くない気温でも、湿度が高ければ、ペットたちにとっては熱中症になりやすいリスクの高い日であるということを理解しておく必要があります。
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次に消化器疾患も夏に多い病気です。夏場は細菌が活発になり、食中毒を起こしやすくなります。また、夏バテにより胃腸の運動が低下するため、動物も人と同様に急性の胃腸障害によくなります。症状としては、下痢や嘔吐、食欲不振などがよくみられます。これは、水を多く飲みすぎたり、水たまりの水や川、海など、屋外で飲みなれない水を口にしたり、腐敗した食べ物を食べることで起こりやすくなります。動物の食餌が終わって、もし余っている餌があればすぐに片付け、食器を洗いましょう。残飯には細菌が繁殖しやすく、腐敗の原因となりやすいのです。また、飲み水も頻繁に新しいものと交換してあげてください。
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最後に、日本では夏場に皮膚病が多くみられます。日本の夏は、高温多湿のじめじめとした環境です。こういった場所は細菌や真菌が増えやすく、特に毛が湿っているため、皮膚が蒸れやすく、気湿が高くなることで、ノミやダニなどの寄生虫も発生します。これらアレルギーの原因ともいえるアレルゲンが夏場には種類も量も多くなるため、皮膚病になりやすいのです。アレルギー性皮膚炎は遺伝的な体質が要因とされていますが、その原因は環境中に認められることが多く、特に多く認められるのが、ハウスダストとダニで、気湿が高いときに多く見られます。また、ノミの刺咬による局所的な炎症反応は強い掻痒感を伴います。刺咬が何回も起こると、ノミアレルギーに進行してしまいます。以上に挙げた病気が夏場によく認められる病気ですが、急激に生命にかかわる熱中症は特に注意が必要です。どんな病気かをよく理解し、その前兆を見逃さず(パンティングや舌の色etc.)、素早い対応(水を全身にかけたり、濡れタオルで体を冷やすetc.)を行えるよう、普段から心掛けておくことが重要です
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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