YouNet ペットとの共生を目指して(3)・・・(200625掲載)

〜人獣共通感染症???〜
犬山動物病院長 太田亟慈

狂犬病清浄国フランスで2008年2月に、狂犬病が発生しました。日本も同様に、危機感を持たなければなりません。そこで今回は、人獣共通感染症についてお話します。あまり聞きなれない言葉だと思いますが、近年、日本でも様々な共通感染症が発症しています。たとえば2000年4月口蹄疫が宮崎県で、2001年9月BSEが千葉県で、2003年5月SARDSが関西で、2004年にトリインフルエンザが山口県で、2005年4月レプトスピラが神奈川県で、2006年11月には狂犬病が京都と神奈川県で発生して被害が出ました。日本で狂犬病予防法が制定されたのは、昭和25年。そして昭和28年に発症したのを最後に、2006年までありませんでした。私も29年生まれの臨床獣医師なので、現実の症例は見たことがなく、教科書で漠然と知りえるだけです。世界的に共通感染症として高い発症例を持つ疾患にもかかわらず、現代日本において狂犬病予防接種率は年々低下。狂犬病の予防がいかに大切かを今一度、考えてみましょう。
                   
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狂犬病予防法には、犬の所有者は犬を飼い始めてから30日以内に各市町村に登録をして、生後91日以上の犬には毎年1回のワクチン接種が義務付けられています。以前は1年に2回、大量のワクチン液を接種しなくてはいけませんでした。動物病院での接種なら問題ありませんが、一般的にいわれている集合注射、4月〜6月にかけて市町村と各獣医師が協力しあって公園や公民館、どこかの広場での接種は非常に困難を極めました。現在では医学の進歩とともにワクチン液も少量で済むようになり、とても容易に取り組めます。しかし集合注射に来られる犬の中には、他の多くの犬を見て興奮し暴れる犬もいます。新人獣医師の中にはかまれるという災難にあう人もいる、非常に危険な仕事です。集合注射はほとんどの場合は、平日に実施されます。行けない場合は、各動物病院でも狂犬病予防注射を実施していますのでご利用ください。
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現在、日本国内での犬の飼育頭数は1200万頭と言われていますが、現状の接種率は40%にも満たない状況です。世界保健機構(WHO)では感染防御には全体の70%の免疫集団が必要と説いています。お隣の韓国も最近までは狂犬病の無発生国でした。平成6年ごろに狂犬病に罹患した野生動物が進入し、犬や家畜に広がりました。その後は人の死亡例も毎年、報告されています。昨年、犬山動物病院に韓国の獣医師が多数来院された時に狂犬病についての話が出ましたが、皆さんの意見では「韓国で狂犬病は発生していない。発表にある韓国とは中国に最も近く、自分たちの認識の中では韓国外のことのように思っている」というのが現状のようでした。わたしたち日本人も、同様だという感覚を覚えました。現実では世界的に毎年、約5万人以上の尊い命が犠牲になっています。中国では狂犬病が増加傾向にあり、拡散を防止するために数万頭の犬を僕殺するという報告があり、非常に残念に思っています。今回は狂犬病予防接種の重要性をお話しましたが、ほかにもたくさんの人獣共通感染症があることを忘れないでください。
こんなときは各市町の担当課へ
★ 犬の登録事項に変更がある場合
★ 鑑札・注射済票をなくした場合
★ 飼い犬が死亡した場合
★ 飼い犬が家からいなくなった場合
★ 犬・猫を保護した場合
★ 犬が人をかんだ場合
江南市保健センター TEL0587-56-4111
犬山市保健センター TEL0568-61-1176
扶桑町産業観光課  TEL0587-93-1111
大口町環境経済課  TEL0587-95-1111
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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