YouNet ペットとの共生を目指して(2)・・・(200528掲載)

〜 昨今のペット事情〜
犬山動物病院長 太田亟慈

ずいぶん前からペットブームが続いています。テレビ関係の人から「いつの時代も、動物を出せば視聴率は取れる」と聞きましたが、多くの日本人、いや人間は心を癒してくれる身近な動物が好きなんですね。僕もその中の1人。子ども時代から現在に至るまで、ペットがいない時はありません。小学校低学年のころはカニクイザルのエッちゃんがいつも側にいましたし、捨て犬を拾ってはわが家の一員にしていました。ぼくが初めて見た犬の出産は、拾って来た犬が妊娠していて、親にしかられながらも家の中に入れ自分の布団で出産。その光景は幼心にも強烈で「すごい」の一言でした。そんなこともあって子どものころから動物に興味があり、獣医師になったんでしょうね。最近の人気ペットは全体的に小型化してきています。大型犬を飼育する場所を確保できない、散歩ができない、経済的に負担が大きいなどの理由で、扱いやすい小型犬に人気が集まっているよう。動物愛好家の中では今も昔と同様に犬派が一番多く、続いて猫派ですが、近年はエキゾチックペット派(フェレット・ウサギ・カメ・トリなど)に押され気味。小型犬ではチワワ・トイプードル・ミニチュアダックスフントなどがより人気で、他犬腫でも小型種が人気のため、繁殖(ブリーダーの間でも)においても小さめの犬の血統を重要視しているようです。
                   
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骨盤骨折をプレートとピンニングで修復
骨盤骨折の整復後
小型化されることで、獣医師を悩ませる骨折が増えました。今まで以上にオペを実施する際には慎重に…。それは、チワワやプードルなどの細い骨を修復することは非常に困難だからです。動物も人間同様、いやそれ以上に四肢を使わないと加速度的に筋肉が委縮。その上、肢を使わないと骨まで体に吸収され、骨折部分の融合不全が発生する骨吸収を発症します。そうなったらどんなことをしても、元には戻りません。残る手立ては再生医療に頼るのみ。しかし、動物においてもまだまだ一般的には利用されていないのが現状。手から落としただけでも骨折してしまうので、必ずしつけをして十分注意をして接しましょう。また、ミニチュアダックスフントは椎間板ヘルニアを発症することが非常に多く、これは犬種の特異性や長い胴体が影響しています。注意すべき点は、階段や段差のあるところはできるだけ歩かせないこと。もちろんジャンプも要注意。もしも急性な腰痛症状が発症したら絶対安静を保ち、動物病院で診てもらいましょう。小型犬で最近よく見かけるのは、犬用のガムを食べての食道不完全閉塞。1〜2日間も食道内に留まると食道粘膜がただれて大変な状況に陥ります。最悪の場合は死に・・・。ガムを食べた後に嘔吐様の姿勢をするなどしたら、必ず食道を確認しましょう。また、エキゾチックアニマルの中で人気の高いフェレットの寿命は6〜7年ほど。種特異性の病気があり副腎疾患が非常に多く見かけられますが、できるだけ早い時期での治療が望まれます。動物好きには喜ばれる、ペットの多種多様化。ペットの住む環境を充実させ、共に快適な生活を送るためにも、動物が苦手な人たちが周りには必ずいることを忘れず、ペットの輪を広げましょう。
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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