YouNet ペットとの共生を目指して(1)・・・(200423掲載)

〜人と動物の関係を考える〜
犬山動物病院長 太田亟慈

初めまして、犬山動物病院・院長の太田亟慈と言います。今月から連載で1年間(12回)、イヌやネコ、エキゾチックアニマルについてのお話を書きます。今回は「人と動物の関係を考える」がテーマです・・・。人間と犬との出会いは1万〜1.5万年以上も前の縄文時代。狩猟しながら生活している人間の周りに、残飯をもらおうと集まってきたオオカミやジャッカル、あるいは原始犬と呼ばれる動物などが徐々に家畜化され現在のペットになりました。猫との始まりは2〜3千年前から。農耕文化が発達し、穀物をネズミから守るために飼育されるようになりました。もっと以前、1万年以上前の遺跡から小型のネコ科の化石が多数見かってもいます。野生動物が家畜になり、その後ペットから現在のコンパニオンアニマル(家庭動物)と呼ばれるようになって、そんなに経過していません。近年、日本では核家族化と共にペットブームが巻き起こり、犬・猫・エキゾチックアニマルなどが多くの一般家庭で飼育されるようになりました。あるときは家族の団らんの中で話題を提供し癒やしの空間をつくり出してくれ、あるときは独り住まいの寂しさを紛らわしてくれ、さまざまな役割を動物たちは担っています。心の癒やしを求めて、またはファッション感覚で動物たちを手に入れ溺愛し、自分たちの都合で放棄してしまう場面を時々見たり聞いたりしますが、家庭動物たちは人間(飼い主)がケアしなければ生きていけません。食事の世話や散歩、排便の始末などが必要です。ただ動物が好きなだけでは解決できない出来事が発生し、私たち獣医師は、病気の予防や治療以前に取り組まなければならないことがあることを痛感しています。
                     
*     *     *
イギリスで、動物愛好家が人と動物の関係を考えるという「Interactions」という言葉が生まれ、その言葉がアメリカに渡り「Human Animal Bond」、人と動物の絆という言葉に変わりました。アメリカ人にとっては以前から求めていた活動で、動物愛好家の間に浸透し活動家たちが誕生しました。日本ではなかなか受け入れられず、長い時間がかかって今に至っていますが、現在、私たちも活動の一環として保育園や小学校、老人介護施設などを定期的に訪問しています(写真)。動物を介して子供や老人たちと出会い、会話して楽しい時間を共有することで心や体の病気の予防や治療のお手伝い。こういった活動をAAA(アニマル・アシステッド・アクティビティー)と言い、これはエンドレスな活動です。AAT(アニマル・アシステッド・セラピー)と言われる活動もあり、医者と動物のトレーナーが協力して病気の回復を手助け。病気が完治したら終了です。このような活動はさまざまな地域で実施されてきています。動物は、われわれ人間が忘れていることを思い出させてくれることもあります。人と動物の、より良い関係を一緒に考えていきましょう。
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

戻 る