YouNet A letter from Singapore (270619掲載)

〜ドラゴンボートレース〜
 齊慶 辰也さん

ドラゴンボートレースの様子
マーライオンが鎮座する港の公園とマリーナ・ベイ・サンズホテルに囲まれた、シンガポールで一番賑わう観光地、マリーナベイ。その西端の一角にドラゴンボートレースの会場がありました。「ブゥオーーン」と号砲が鳴り響きます。太鼓の「ドン!ドン!」の音と共にボートは進みます。ボートの船首には大きな太鼓を配し奏者が1人、10人の漕ぎ手を挟んで、船尾には舵を操る人が1人。合計12人が乗ったドラゴンボートは、思った以上の速度で一気にコースを駆け抜けました。今回観戦したのはスモール艇(全長9m)でのレース。漕ぎ手が20人のスタンダード艇(全長12m)のレースもあるそうです。腕が女性の太ももほどありそうな見るからに屈強な男性10人の漕ぎ手が大太鼓のリズムに合わせ、息の合ったパドルさばき。チームは、地元企業や大学・短大の同好会や部活動系が主流。観戦前にイメージしていた、伝統的な風物詩というイメージが吹っ飛びました。

ドラゴンボートレース
ドラゴンボートの起源は古く、約2300年前、中国の楚(そ)の伝承まで遡るそうです。陰謀によって失脚し川へ身を投げた信望ある政治家の亡骸を魚が食べないようにと、ちまきを川に投げ入れたとの伝説によります。その後、中国の年中行事となり、船首に竜の飾りをつけた小舟のレースが行われたり、多くのちまきを川に投げ入れたりしました。日本にも伝わる端午の節句の由来だそうです。長い間中華圏の伝統行事だったドラゴンボートは、1976年に香港が初の国際レースを開催したり、2008年の北京五輪で公開競技となったりしたことを受け、世界70カ国以上で親しまれているそうです。中国から伝わった伝統的な行事が、近代的スポーツとして親しまれビッグイベントになっている様子に、シンガポールの急加速的な発展・変化を感じました。

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