YouNet A letter from Singapore (261219掲載)

〜シンガポールの民話〜
 齊慶 辰也さん
水を吐くマーライオン 
日本は、どこへ行ってもその地の民話があります。また、古事記などに由来する神話もあります。シンガポーリアンに民話や神話を尋ねてみると、地域や道路の由来や歴史を語ってくれるだけでした。その中で、唯一民話らしいマーライオンのお話を紹介します。昔、スマトラ島(インドネシア)の若きサンニラ王が新しい町を造ろうと考えました。
裏に立つ小さなマーライオン
そして、マレー半島の先っぽにあるテマセクと呼ばれる小さな島(現在のシンガポール)に、苦難を乗り越え上陸しました。サンニラ王が島を調べようと進んでいくと、すごい速さで動く動物を見ました。その動物は、サンニラ王達に気付くと、ゆっくり立ち止まり威厳に満ちた目で一行を見つめました。赤みを帯びた体、黒い頭に白いたてがみ、がっしりした足。
セントーサ島のマーライオン 
その動物は、一行が見守る中、堂々とした足取りで森の中に姿を消しました。サンニラ王は、このライオンに大変心を動かされ、この島を「ライオン(snga)の都市(Pura)を意味する「Singapure(シンガプーラ)と名付けました。その後、ライオンを見た者はありません。しかし、ある漁師が、シンガポール川の河口付近で、体が魚で頭がライオンの不思議な動物を見たと言い、人々はその動物を「マーライオン」と呼び、国の守り神として祭ったということです。
マウントフィーバーのマーライオン
シンガポールのシンボル、マーライオンは現在、幾つかの場所で見ることができます。最も有名なのは、シンガポール川河口に立つ海に水を吐くマーライオン。実は、その裏側に小さなマーライオンもあります。2頭ともシンガポール政府が認めているれっきとしたものです。その次に有名なセントーサ島にある高さ37メートル、中に入ることができるマーライオン。そして、マウントフィーバーの山頂にあるマーライオン。民話の数は少ないけれど、それを上手に使う観光大国シンガポールを感じます。

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