YouNet A letter from Singapore (260919掲載)

〜シンガポールの迷信あれこれ〜
 齊慶 辰也さん
観光客が多いシンガポール。お店の中でその場の雰囲気や商品を写真に収める観光客が、店主に「写真を撮るな」と文句を言われていることがあります。不思議に感じシンガポーリアンに尋ねると、中国系住人の一部には、お店の中で写真を撮るのは縁起が悪く、運気が下がり商売が下降するという迷信があるとのことでした。そのシンガポーリアンによると、「頭には個人の精霊が宿る」という迷信を信じている民族もあるので、特に左手で子どもの頭に触れることはやめた方がよいとも話していました。シンガポールには太陰暦7月に「ハングリーゴーストフェスティバル」というお祭りがあります。地獄の門が開き死者が彷徨する時期とされ、日頃普通にすることもタブーとなる期間です。例えば、泳ぎに行かない、誰も居ない場所で知らない人と話をしてはいけない、夜名前を呼ばれても振り向かない、夜3人で並んで歩いてはいけない、家の中では外で使った傘をさしてはいけないなどです。これらのタブーを破ってしまうと、死者にさらわれるという迷信です。

          *          *          *

観光客でにぎわうチャイナタウン。店内の写真は、撮らない方が無難かも。
日本の「四は死に繋がる」に似た迷信もあります。中国語は時計を意味する鐘(zhong)と、終わりを意味する終(zhong)が同じ発音です。シンガポールでは、時計のプレゼントは良くないとの迷信に繋がっているようです。日本の丙午(ひのえうま)の迷信に似たもので、寅年に生まれた女の子は強くなりすぎて不運になることが多いというものもあります。これは、新生児の減少を心配した時のシンガポール首相が新年のあいさつの中で、「寅年の子どもはよくないとの迷信にとらわれないで欲しい」と呼び掛けたとのことですから、随分広く信じられていることを感じます。迷信は科学的な根拠に乏しいとは思いますが、シンガポールでも伝統文化の一部として息づいていることを感じます。

戻る