YouNet くすり博物館のちょこっと歳時記 (9)・・・(251220掲載)

生きたイチョウ〜
紅葉の季節を迎えました。すっかり黄色くなったくすり博物館のイチョウの葉がハラハラと落ちます。イチョウの黄葉が散る様子を、与謝野晶子は和歌で「金色の小さき鳥のかたちして銀杏(イチョウ)散るなり夕日のおかに」(小さな金色の小鳥がとぶようにみえる)と詠みました。イチョウは中国原産のイチョウ科に属する一種一属の落葉高木です。原始的な裸子植物とされており、1億7000万年前のジュラ紀の地層から、現在とほとんど同じ姿の化石が見つかっています。移植しやすく、大気汚染や火災に強いため街路樹としてよく植えられます。厚く発達した樹皮のコルク質により耐火性があるためです。銀杏城とも呼ばれる熊本城は、天守閣の近くに防火対策としてイチョウを加藤清正が植えました。都府県の木としてイチョウを指定するところも少なくありません。東北大学、東京大学、大阪大学、熊本大学のシンボルマークはイチョウの葉をモチーフにしています。水に強く加工しやすいイチョウの木材は、家具やまな板などにも使用されます。果皮を除いた実は、銀杏(ぎんなん)として茶碗蒸しや炊き込みご飯や酒の肴としてもお馴染みですが、漢方では核仁の生薬名で用いられます。中国の古典『本草綱目』には銀杏の効用として咳を鎮め、抗利尿の作用があると書かれています。タンパク質が多く、脂肪には細胞膜を作るのに必須の成分であるレシチンや、ビタミンDの前駆物質であるエルゴステリンといった骨粗しょう症の予防効果がありそうな成分が含まれています。くすり博物館の古書に、イチョウの葉が栞のようにはさまっていることがあります。書籍の紙魚(しみ)と防虫効果を期待したのでしょう。化石として残るほど腐りにくいだけでなく、大量に食べると有毒な成分も含まれています。もっぱらシダ植物をえさにしていた草食恐竜にとっても、あまり都合のよい植物ではなかったために食べつくされずに現在まで生き延びたのかもしれません。
                                  (くすり博物館 伊藤恭子)

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