YouNet くすり博物館のちょこっと歳時記 (2)・・・(250518掲載)

雪のような花
 〜ヒトツバタゴ〜

 
緑の美しい季節がやってきました。この時期になると薬草園の花の開花時期に合わせてご来館される方もみえ、「○○の花はもう咲いていますか?」といった問い合わせをいただくことも少なくありません。この時期に咲くナンジャモンジャも、問い合わせの多い花の一つ。ナンジャモンジャの名のいわれは「あれは何ものだ!?」からきているともいわれ、ゴールデン・ウイークが始まる頃から5月の中頃まで白い花を咲かせます。

くすり博物館の正面のヒトツバタゴ
和名はヒトツバタゴ。「一葉(ひとつば)たご」の「たご」は「トネリコ」という木の方言名です。江戸時代、尾張藩の植物学者、水谷豊文がトネリコに似た木をみつけ、トネリコが複葉であるのに対して、この木は単葉であったので「ヒトツバタゴ」と命名したようです。花が咲くと葉の緑と花の白のコントラストが鮮やかで、その景観はまるで木に雪が積もっているよう。くすり博物館の正面の両側にも植えられていて、満開の時は大変見ごたえがあります。「Chion(雪)+anthos(花)」が語源で、白い花のかたまりを雪にたとえました。雪のような花ということから属名はギリシャ語で「Cchionanth:チオナンサス」(雪の花)と呼ばれています。日本ではもともと、岐阜県と愛知県・長野県の一部と長崎県の対馬に自生し、モクセイ科の雌雄異株の落葉高木です。自然に自生するヒトツバタゴは珍しく、天然記念物に指定されているものが多くあります。最近ではこの木も各地で移植されるようになり、季節には美しい花を咲かせ、目にする機会が増えました。写真を撮ったり、描いたり、まだまだいろいろ楽しめそうです。  (くすり博物館 伊藤恭子)


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