YouNet ペットとの共生を目指して(12)・・・(210325掲載)

〜予防について〜
犬山動物病院長 太田亟慈

今回で12回シリーズの最後となりました。日本の法律では、イヌ(生後91日以上)は1年に1回、4月〜6月の間に狂犬病予防ワクチンの接種が義務付けられています。飼育の登録(一生に1回実施)が必要で、一般的には市町村が各獣医師に委託して保健センターの職員さんと共に各地域の公園や施設の軒先で接種します。短時間での接種ですので、集中して混雑した時は犬同士で喧嘩をすることがあり、嫌がるワンちゃんも多く、いつも注意が必要です。もちろん混雑していても個々それぞれ問診を行ってワクチンを接種。時には事故につながることもあり、今までにも職員の方や獣医師が噛まれたり、噛まれそうになったりすることもありました。近年、集合注射での接種頭数が減少しているのが現状で、その要因は様々ですが、一番には各地域での動物病院の充実化があります。動物病院でもワクチン接種が受けられ、各動物病院によっては、保健所の手続きを代行するサービスをしているところもあります。集合注射は平日実施のため、連れて行くことができない人たちも多く、ある地域では各動物病院で集合注射と同様にワクチン接種や登録ができるシステムを取っているところもあります。日本で最後の狂犬病発症例は昭和28年度に報告がありますが、それ以降は見られていません。けれども、海外旅行で犬に噛まれて感染し、日本で発症した例が近年あるように、日本に入って来る可能性は否定できません。様々な人獣共通伝染病はたくさんあり、その中でも狂犬病は人への感染がある特に恐ろしい病気です。
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フィラリアはキャリアーの蚊がイヌを刺した時の血液吸引により、寄生虫の卵をイヌの体に植え付けて3ヵ月後には心臓へ到達、今度は血液循環で全身に子どもを送り出します。特にイヌの場合は、最終的に心臓に寄生する怖い病気です。但し、人への感染はありません。この地域では6月頃からの投薬開始が良いと思います。沖縄などの暖かい地域では一年中投薬する場所もあります。予防方法は毎日経口投与・毎月1回経口投与や注射による接種など様々。効果はほとんど一緒なのですが、手間の面から考えて、どの方法が良いかは飼い主の判断に任されます。僕が獣医師になりたての頃、この地方では犬の血液を検査するとほとんどがフィラリア感染犬でした。現在では血液検査をしても感染子虫は検出できないのが一般的です。予防が充実して来た現在の状況は、長い間の愛犬家の努力によって証明されています。予防ができず感染してしまったイヌの場合は、心臓からフィラリアの成虫(数10cm)を摘出します。現在ではとても珍しい症例になりましたが、この手術はテレビレントゲンを見ながら特別な鉗子を使って成虫を摘出します。そして予防の季節に予防薬を投与。費用はかかりますが、愛犬を守るため、予防注射や予防薬を投与することは愛犬家の義務。快適な環境を作り、出来るだけ長い時間をペットと一緒に暮らしましょう。
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あっと言う間に、シリーズの12回目になってしまいました。少しでも動物病院のことを知って頂きたいと思い、様々な方面から紹介させていただきした。最後に、動物は言葉を持ちません、動物も家族の一員です、家族を思いやる気持ちを持って大切にしてあげてください。ありがとうございました。
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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