YouNet ペットとの共生を目指して(9)・・・(201217掲載)

〜寒い時期の病気〜
犬山動物病院長 太田亟慈

肌寒くなり、寒さが身にしみる季節になってきました。私たちとってもインフルエンザが流行する季節、手洗いやうがいなど風邪予防が必要な時期です。冬に病気が多いのは、人間も犬や猫など動物も同じ。犬は比較的寒さに強いものと思われがちですが、冬にかかりやすい病気がたくさんあります。また、猫はもともと南の暖かい地方で生まれ寒さには弱い動物。日々の観察を心がけ、病気の兆候を見逃さず、動物を病気から守りましょう。
冬に発生しやすい病気の原因としては(1)乾燥した冷たい空気が喉や鼻を刺激しやすい(粘膜の働きが弱くなり、細菌やウイルスに対する抵抗性が低くなる)。(2)低温・低湿度がウイルス(インフルエンザetc)が活発に行動する環境をつくる。(3)動かなくなることで運動不足になりがち(関節が温まらない)。(4)運動しないため1日の水を飲む量が減る(尿の作られる量が少なくなる)などが考えられます。
注意したい病気としては(1)循環器・呼吸器系(2)感染症(3)関節の疾患(4)泌尿器系の疾患など。
《環器・呼吸器系の疾患》
冬は鼻や喉の粘膜が乾燥しやすく感染などに対する免疫力が低下。細菌やウイルスは口や鼻を通って気管や肺に炎症を起こし、咳やくしゃみを引き起こします。カッ、カッといった乾いた咳の場合は心臓からくる可能性が高く、クシュン、クシュンといった湿った咳は肺や気管の病気が原因となることが多いです。高齢の犬は心臓病を引き起こしている可能性もあり(特に小型犬やキャバリア)、免疫力が低下しやすいため咳には充分注意を。換気を行って空気の入れ替えを行い、加湿器で湿度を保つことが病気の予防につながります。
《感染症》
冬場はウイルスが活発に活動する時。ワクチン未接種の犬・猫は、特に注意しましょう。下痢や嘔吐などの消化器症状のほかに神経異常を引き起こすウイルスもいます。生後5ヵ月以内の子犬・子猫はワクチン接種が完全に終わるまで他の犬や猫との接触を避けましょう。また、寄生虫が体内にいる子犬・子猫はワクチンの効果が半減してしまいます。予防接種の前には便検査などの健康診断を行いましょう。また、目やにや鼻水は時にウイルス感染のシグナルとなります。発見した時は病院にご相談ください。
《関節の疾患》
冬はどんな動物でもあまり動きたがらなくなります。関節が温まらないときに急激な運動をすると関節炎や神経の異常を引き起こします。特に肥満は大敵。肥満の場合は直接腰や関節に負担がかかるため、脱臼や靭帯断裂、ヘルニアなどを起こす要因となります。食事管理をして体重管理を行い、急激な運動を避けて、適度な運動を・・・。
《泌尿器系の疾患》
夏に比べて水を飲む量が極端に少なくなる冬は、同時に尿の作られる量も少なくなります。いつまでも古い尿が膀胱から排泄されないと、細菌の感染を起こしやすく、膀胱炎や結石の原因となります。犬も猫も一般的に尿道の短いメスは膀胱炎になりやすく、症状としては頻尿・残尿感・血尿などがみられます。
オスは尿道が長くペニスの先で細くなっているため結石がつまりやすいもの。結石がつまってしまうと尿が腎臓に逆流して、急性腎不全を発症し急死することもあります。排尿姿勢をとっているにも関わらず尿が出ていないときはすぐに来院してください。日ごろから尿の色、回数、量をこまめにチェックしておくことが大切で、血尿、頻尿、残尿感がみられたら早目に病院にご相談ください。
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その他にノミ・ダニは夏場の暖かい時期にだけ発生すると思われがちですが、暖房などで室内温度が18度以上であれば、活動し始めます。ノミ、ダニは1年を通して予防しましょう。冬の病気全般のポイントは人も動物も基本的には同じ。換気を行い、栄養と新鮮な水を充分摂取し、急激な運動を避け、病気に対する抵抗性を身に付けましょう。早期発見・早期治療が重要です。病気の兆候を見逃さないよう動物を観察してあげましょう。
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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