YouNet ペットとの共生を目指して(7)・・・(201022掲載)

〜ペットロスシンドロームについて〜
犬山動物病院長 太田亟慈

今月は、ペットロスシンドロームのお話です。ペットロスシンドローム…、ペットとの別れは経験したくない出来事ですね。家族の一員であり、いつも一緒にいるペットとも、いつかは別れる時が来ます。早いか遅いかは、簡単に予測することはできません。その別れは、死別を意味するだけではなく、突然の行方不明や引っ越しなどで住宅事情が変わって飼えなくなり手放さなければならない・・・など、さまざまです。突然の別れの場合、戸惑い、辛く、そして悲しくて食事も喉を通らない、仕事や家事も何も手につかないといった状態になることがあります。そのような状態を、「ペットロスシンドローム」と言います。それは決して病気なのではなく、動物愛好家の皆さんなら必ず体験する出来事。私たちが一緒に生活をしているペットは家族の一員です。例えば恋人や友人の代わり、両親が留守がちな子どもたちにとっては親の代わりでもあります。私たちの心を癒やしてくれる大切な友人であり、子どもたちにやさしい心や弱者への思いやりの気持ちを教えてくれる存在のペット。人間は自分の大切な両親や兄弟、友人、恋人を失ったら深い悲しみに陥ります。ペットを亡くしても、同じ悲しみを経験するのは当たり前のことなのです。それでも、ペットを亡くした時には、周りの人たちから「たかがペットを亡くしたくらいで」と軽く考えられ、本人の悲しみや辛さ、苦しみを理解してもらないことがあります。本人も、ペットロスの状態を心の病気と思いこみ、憂鬱感から、躁鬱状態に陥ってしまうこともあります。通常の生活を送ることができなくなることもあるそうで、自分の周りにペットロスシンドロームに陥った人がいたら、そのペットとの生活がどのようなものであったのか、どれだけの楽しい出来事があり、忘れられない思い出はどんなことであったのか、話を聞いてあげてほしいと思います。決して無理に忘れさせたり、励ましたりせず、亡くなったペットに真っ直ぐに向き合うことができるよう、話を聞いてあげることが大切です。
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近年はイヌやネコだけではなく、ペットの種類も多種多様です。そして、それぞれに寿命も違います。子どもに人気の小動物、特にハムスターなどは2〜3年と寿命も短く、ウサギやフェレットは5〜8年の寿命。イヌやネコでも、平均すると10年少々だと言われています。ペットロス状態が重症になる原因にはいろいろな理由がありますが、寿命が人間より短いことで、「まだまだ最愛のペットと一緒に楽しく暮らしたかったのに…」「もっといろいろなことをしてあげたかったのに…」と、後悔ばかりが込み上げて来てしまい、そして自分を責めてしまうことがあります。そうならないためにも、日ごろからのペットとのかかわり方を見直し、ペットの寿命をよく知り、生きている間に愛情を持って接してあげることが大切です。そうすれば、動物たちは、私たちの心や体にやさしい癒やしを与えくれ、快適で素晴らしい人と動物の共存・共生ができるはずです。動物との共存・共生を目標にして、前に進みましょう。
 
〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

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