YouNet ペットとの共生を目指して(6)・・・(200924掲載)

〜目の病気について〜
犬山動物病院長 太田亟慈

ワンちゃん、ネコちゃんの目は人間とほとんど同じ構造ですが、人間と比べると視力は低く、人間の平均視力を1.0とすると、ワンちゃんの視力は0.3くらいです。また、色を見分ける能力も低く、夜行性のワンちゃん、ネコちゃんにとって色を感じる機能はあまり必要なかったのでは、と考えられています。一方で、物の動きをとらえる動体視力は優れています。祖先は狩りをして獲物をとらえて生活していたわけですから、静止しているものよりも動いているものを見る力が発達したのでしょう。また、人間に比べて、目以外の感覚(聴力:人間には聞こえない周波数が聞ける、嗅覚:100万倍など)がものすごく発達していて、目が見えなくなったワンちゃん、ネコちゃんが物にぶつからずに歩けることがあり、驚かされます。獣医療の進歩、飼育環境の変化により、動物の寿命が昔に比べて長くなった最近では、お年寄りの目の病気として代表的な、白内障や緑内障がワンちゃんやネコちゃんにも急増し、人間と同じように手術を行います。白内障は人間と同様に老齢性の場合がほとんどですが若い子や、糖尿病のワンちゃんにも起きることがありますので、人間の食べ物をたくさん与えたり、太らせたりしないようにすることが大切です。
                      *     *     *
皆さんは目の病気で眼科のお医者さんにかかったことがあると思いますが、そこではいろいろな検査が行われます。「はーい、まばたきを我慢して…」と機器にあごを乗せて、目の表面や目の奥の眼底検査などを経験された方も多いでしょう。ワンちゃん、ネコちゃんでも目の病気を調べるために、同じような検査を行う必要があります。しかし、ワンちゃん、ネコちゃんではそう簡単にはいきません。暴れる子、噛みつく子など、検査をするのも一苦労。それゆえ人間の眼科のお医者さんとは違った、獣医療独特の機器がたくさんあり、時には麻酔をかけて検査を行うこともあります。検査が終わって治療を行う場合でも、目薬をさせない子もいて、治療は一筋縄ではいかないことも多いものです。ワンちゃん、ネコちゃんの目は、人とほとんど同じ構造と書きましたが、人にはない目の構造として瞬膜があります。瞬膜はまぶたと角膜の間にあり、まぶたを開け閉めするのと同時に開閉し、眼を保護する役割。瞬膜の病気でチェリーアイ(写真)という病気があります。瞬膜の内側にある瞬膜腺という腺が飛び出して、サクランボのような状態になることからそう呼ばれていますが、手術で飛び出した腺を内側に押し戻し、再び飛び出さないように糸で縫って治療します。パグ、シーズー、ボストンテリア、チワワなどの目が大きく、飛び出ている犬種は角膜潰瘍など目の表面の病気になりやすく、コンタクトレンズを使用する人に多い乾燥性角膜炎は、犬でも多発する病気です。
                       *    *    *
人間は症状を言葉で表現しますが、ワンちゃん、ネコちゃんは言葉を話せません。飼い主さんがちょっとした変化を見逃さずに、病気に気づいてあげなければなりません。目が濁ってきた、羞明(まぶしそうな目)、涙を流す、目が赤いといった症状は重要な目の病気のサイン。全身の病気のサインであることもあり、目が赤いということで来院したワンちゃんが、実は神経の病気だったという例もありました。その子は顔の神経が麻痺してまばたきができず、目が乾燥して赤くなっていたのです。言葉を話せないワンちゃん、ネコちゃんだからこそ、そのようなサインがあれば早めに動物病院を受診しましょう。

 

〜太田亟慈さんプロフィル〜

犬山動物病院(犬山市羽黒)院長、各種研究会、学会に所属、専門は外科手術。ワンストップホスピタルを目標に、人と動物に優しい動物病院づくりを目指す。

戻 る