自分の両親ばかりか、奥さんの両親までもが相次いでがんを患い、町拓磨さんは死をより身近に感じるようになったそうです。そんな矢先に起こったのが東日本大震災。刻々と判明していく犠牲者の数に痛ましい思いと同時に、自身の生き方について改めて考え直す機会となりました。自分にできることは何なのだろう。そう自身に問い掛け、出した答えが「亡くなった人を送ることに携わる」というものでした。こうして町さんは葬祭業へと転職を果たします。前職はガラス製品の試作品づくりで、仏壇や仏具など手の込んだ工芸品を見ると、ものづくりの血が騒ぎますね、と笑顔で話します。穏やかな口調に、キビキビとした態度からは、生来の真面目さが伝わってきます。現在は扶桑町高雄下野にある㈱木村屋のメモリアルで、葬儀のアフターフォローを担う法要事業部に籍を置いています。もともとグリーフケアに関心があったと話す町さん。グリーフとは悲嘆という意味で、近しい人を亡くした人がその悲嘆を乗り越えられるように支援するのがグリーフケアです。亡くなった人を送り出す葬祭部ではなく、残された人たちに対して心を配り、供養に関する相談に乗ったり、助言したりする今の部署は町さんにとって適職だったようです。「皆さん、大切な方を亡くされているわけですから、それを受け入れることから始まります。悲しみを言葉に出すことで気持ちの整理ができるという方が多いので、できる限り時間を割いて、お話をうかがうようにしています。たとえば仏式であれば、四十九日で一区切りとなります。その約1カ月半という時間のなかで、どれだけお客様の心に寄り添うことができるか。そこに法要事業部の価値や意義があると考えています」。メモリアルでは仏壇仏具のほか、花やギフトも扱っています。「亡くなった方へお花とお線香をと立ち寄ったり、仏壇の相談に訪れたりと、気軽に足を運んでいただける店を目指していきたいです」と話します。転職してまだ1年2カ月と日が浅いながらも、供養について頼られるようになりたいと、仏事コーディネーターの資格取得に向けての勉強にも取り組んでいる町さんです。 |