「お客様に満足してもらえるような仕事をすることは当然ですが、自分自身が納得できる仕事をするためにも手を抜くことなど考えもしません。たとえ損をすることがあっても、それは曲げられないこと」と、刀祢正次郎(とねまさじろう)さんは話します。そんな仕事に対する姿勢や考え方はまさに職人かたぎそのものですが、無口でとっつきにくいという職人さんの一般的なイメージと違って、明るく話好きの刀祢さん。昨年開いたお店、仏壇工房「匠」=江南市古知野町牧森=も、お年寄りたちが気軽にお茶を飲みに来て、世間話が楽しめるような場所にしたい、と言います。 |
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仏壇の製作工程は大別すると木地造り、宮殿・荘厳造り、彫刻、錺金具作り、塗り、箔押し、蒔絵、組み立ての八つに分かれており、「八職」と呼ばれる各工程の専門職人がいます。刀祢さんは、老舗仏壇店の製造工場の工場長を長くしていた経験から木地直しや塗り、箔押し、金具打ち、仕上げなど、多岐にわたって仕事をこなします。そしてどの作業についても心掛けていることは、平均点以上の仕事を目指すこと。仏壇の修理や洗濯をする上では、どれか一つが飛び抜けていても、仕上げの段階で全体の統一感が崩れてしまうからだそうです。また職人としての心構えは「伝統工芸士などの資格を望む職人もいますが、資格はお客様がやった仕事に対して与えてくれるものだと思います。お客様が見放した時点で、資格はなくなる。すべてはお客様が決めることです」。 |
刀祢さんは、福井県の出身。小さいころからものを作ることが好きで「将来は、コックか板前になりたかったですね。兄が仏壇の仕事をしていて、両親がその手伝いをさせようと、修行に出されたことがこの道に進んだきっかけでした」。洗濯を終えた仏壇を見て、きれいになったと喜ぶお客さんたちの顔を見ることがうれしい、と言います。大型の仏壇を修理するときなどは、岐阜県の白川町にある工房で作業をするそうですが、お店にいるのを見掛けたときには、気軽に声を掛けてほしい、と話します。 |