●伝統を踏まえ新時代を切り開く・・・170122掲載

人形作家 長江人形店 長江芳彦さん(63)・長江三代子(32)さん親子

桃の節句を前に、親王飾りから豪華な段飾りまで、きらびやかな雛人形が店内いっぱいに並ぶ長江人形店=扶桑町高雄南東川。工房にはそれら雛人形一体一体の仕上げに励む長江芳彦さん・三代子さん親子の姿があります。「仕事にはいつも前向きな姿勢で取り組み、妥協を嫌う父を尊敬しています」と、三代子さんが語る父でありまた師匠でもある芳彦さん。小さいころから手先が器用で、人形製作をしていた親類にその素質を見込まれ人形作家への道を歩むことになりました。「以来、人形作り一筋です。だから、ほかを知らないまま今日まで来てしまいました」と笑顔で話します。一方、OLをしていた三代子さんが人形作家を志したのには、こんな経緯がありました。「仕事でイギリスに滞在中の姉夫婦の元を訪れた時のことです。
伝統を重んじるイギリス人たちが、おみやげの雛人形に感激している様子を目の当たりにして、改めて日本の伝統工芸品である雛人形の魅力に気付かされ、再認識した」そうです。今、三代子さんはマンションなど洋間が多い近年の住環境にも合う雛人形を製作しています。レースやビーズなど、これまで使われなかった素材を取り入れ、現代的な色調を配した着物に身を包んだ雛人形です。「ですが、歴史や伝統、日本古来の色などを踏まえた上で製作に臨んでいます」と三代子さん。そんな三代子さんの挑戦を温かく見守る芳彦さんは「伝統を継承するということは、形や技をそのままに守り伝えることでなく、自ら新しい時代を切り開いていくこと。それは自分を鍛えることだ」と言います。「60歳になってやっと自分の仕事を客観的に見られるゆとりが生まれたと感じています」と謙虚な姿勢で励んでいます。美しく健やかに育つようにとの願いを込めて贈られる雛人形。その思いにふさわしい人形を製作しようと、これからも心と技を磨き続ける長江さん親子です。





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