〔薬師如来〕 右手の印相は怖れを取り除く施無畏(せむい)印。左手に万病に効く薬の入った薬壷を持つようになるのは平安時代から。 |
薬師如来は、正しくは「薬師瑠璃光如来」といいます。「東方瑠璃光浄土」とは、はるか東にある仏の世界のこと。薬師如来はまだ菩薩だった時代に立てた12の大願の中に、衆生を病から救うことが挙げられ、日本でも古くから病気平癒を願って多くの像が造られました。唯一持物(薬壺)を持つ如来として知られていますが、薬壺を持っていても薬剤師ではなく「大医王仏」、つまり人々の病気を治し、延命し、さらに精神的な苦痛も取り除いてくれるお医者さんです。医学が未発達の昔は、病気にかかるのは悪霊の仕業であって、お祈り以外に治療方法はないと考えられていました。薬師如来を本尊として建立された寺院は個人の病気平癒を祈願したものが多く、例えば法隆寺の本堂の薬師如来像は、聖徳太子の父君、用明天皇の病気平癒祈願のためと伝えられています。薬師如来の脇侍は日光菩薩と月光菩薩。そのほか眷属といって、如来の家来、あるいは分身の十二神将と呼ばれる武装した像を従えるときもあります。その印相は右手が施無畏印、左手が与願印で、左手の上に薬壺が載っていますが、古代の像にはほとんどありません。 |